「ちょっと待って下さい」

朝陽は大きく深呼吸すると手の平にかいた汗をそっとぬぐった。
相当緊張しているのか顔が真っ赤になっている。

「まさか緊張してるの?」
直志がちょっと笑いながら朝陽の顔を覗きこむ。

「一応、女の子だからね」
「へえ、知らなかった!」
「こらっ!」
朝陽が笑いながらゲンコツを振り上げる。



「あのー もう、よろしいですか?」
「はい、もう大丈夫です」

朝陽の声に係りの男が目の前のドアを大きく開いた。

そのとたん、強烈なスポットライトと割れんばかりの拍手が朝陽を包み込んだ。


「新郎・新婦の入場です!」

 

 
司会の男が張り上げる声も拍手の渦に飲み込まれてほとんど聞こえないほどだ。

新郎・直志の腕を軽く取って花道を歩いてくる朝陽は最高に輝いている。

新婦の朝陽を末席から眺めているのは、父・英夫と妻の優美。

「綺麗だわ・・・ 朝陽」
「そうだな」
「大きくなったわね」

「あぁ。思い出すな、朝陽が小学生だったころ・・・」

 

 

 

①へ続く・・